快眠のための寝室の室温は23度

「眠るのに適した温度」というものがあります。いつでも「良い眠り」を得るには、眠るときの「適温」にも気をつけたいものです。
その適温とは、23度。暑くなく、寒くなく、心地良い温度です。と言っても、ふとんの中の温度は調整しにくいので、室温を調節します。

室温の目安は、地域にもよりますが、夏は27~28度、冬は18~20度、湿度50~60%です。エアコンだけでなく、除湿器や加湿器も上手に使いうといでしょう。

なぜ、この温度が適温なのでしょうか。睡眠の第1の役割は、脳のオーバーヒートを防ぐことです。そのために、体温を下げて脳を冷やします。体温が下がると、眠くなるのです。体温は活動と休息のリズムに合わせて、上がったり下がったりしています。

運動や食事などに敏感に反応し、小幅な上下を繰り返していますが、活動しているときは高く、寝て休息しているときは低くなります。

通常、日中はずっと高く、夕方の6時ごろにもっとも高くなった後、少しだけ下がります。午後11時ごろから急速に下がり、午前3~4時にもっとも低くなった後、低いレベルを保ち、翌朝7時ごろから急速に上がり、高いレベルとなります。体温が下がって眠くなるとき、誘眠ホルモンのメラトニンの分泌がさかんになります。メラトニンと体温は互いに影響しあって、眠りをつくつているのです。体は皮膚から放熱して血液を冷やし、これを循環させて体温を下げます。

たとえば、赤ちゃんの手が温かくなってくると、お母さんは「眠くなったのね」と言ってふとんをかけてやり、寝かせます。手が温かくなるのは、体温を下げて眠りに入る準備のため、副交感神経が働き末梢血管が広がり、手から放熱しているからです。

うまく放熱し、体温が下がれば、眠気が生まれ、すんなり寝つくことができます。うまく放熱できないと、体温が下がらず、寝つきが悪くなります。ですから、ふとんの中を、体が放熱するのに適した温度に保つことが大切です。その適温が、33度なのです。適温より低いと、体は、冷えすぎるのを防ぐために、筋肉を緊張させて熱をつくります。したがって、体温がスムーズに下がりません。逆に、適温より高いと、体は汗をかいてしまって体温を効率良く下げることができません。すると、寝つきが悪くなってしまいます。だから、寝るのにちょうど良い温度になるように、室温を調整することが大切なのです。

睡眠を邪魔する5項目

睡眠そのものにも、リズムがあります。いつでも「良い眠り」を確保し、「太らない体」の基礎をつくるには・睡眠のリズムも無視できないのです。もし、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めてしまう、といった悩みがあるのなら次のようなことが原因になっているのかもしれません。思い当たるものがあったら、すぐに対処したほうがいいでしょう。

歳をとるにつれて、睡眠の質は下がっていきます。それが、「太る体」に直結します。ですから、ちょっとしたことでも気をつけて、「良い眠り」を得やすい状態に持つていくことが大切です。

そもそも「睡眠」は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がワンセットになり、90分周期で4~5回線り返されて目覚めに至ります。

「レム睡眠」は、体を休めるための浅い眠りです。体は眠っているのに、脳は活動しています。「レム睡眠」の代表的な役目の1つは、心のメンテナンス。眠っている間に、悲しみや怒りといった感情や精神的なストレスをやわらげているのです。

一方、「ノンレム睡眠」は、脳を休める睡眠であり、レム睡眠よりも深い睡眠です。その中にも「浅い眠り」と「探い眠り」があり、睡眠時の前半は「深いノンレム睡眠」が多く、後半は「浅いノンレム睡眠」が多くなります。

「ノンレム睡眠」の代表的な役目は、体のメンテナンスです。眠っている間に、脳の神経回路の調整、皮膚や筋肉の修復、免疫機能の強化などを行なっているのです。

これらの睡眠のバランスが良いとき、私たちは「ぐっすり眠れた」と感じます。夜更かしして午前2時、3時に寝たり、早く寝ても途中で目覚めたりすると、睡眠のバランスが乱れ、熟睡感が得られません。

当然、目覚めもスッキリしません。歳を重ねるにつれて、睡眠のバランスは悪くなります。「深いノンレム睡眠」と「レム睡眠」が減少し、「浅いノンレム睡眠」ばかりが多くなって、途中で目覚めやすくなります。やがて、「年寄りは朝が早い」ということになります。

このように、歳とともに睡眠の質は低下します。歳をとると避けられない変化の1つですが、「日中の活動量の減少」がいっそう睡眠の質を低下させているという一面もあります。

質のよい睡眠のために大切な5項目です。日常の習慣にできるように取り入れていくといいでしょう。

「グッスリ眠る」には、日中、15分程度歩いたり、スポーツをしたりして、できるだけ活動的に過ごすことが、まず大切なのです。浅い眠りが習慣づくと、ちょっとした刺激で目覚めやすくなります。街路灯の明かりや電話の音、車のクラクションなどで目覚めるようならば、寝室の遮光、遮音が必要です。トイレに起きる回数が多いようならば、前立腺肥大症などの病気の可能性があるので、泌尿器科を受診しましょう。

また、脚がムズムズしたり、息苦しくなったりして目覚めるようならば、睡眠トラブルを起こす病気の可能性が高いので、睡眠の専門医に相談しましょう。

寝酒も、途中で目覚める原因になります。アルコールを飲んで寝ると、寝つきは良くなりますが、寝ついて】、〓時間後に目覚めてしまう場合が多いのです。寝つきが良くなるのは、アルコールがストレスをまぎらわせ、血行を良くするからです。目覚めてしまうのはアルコールの利尿作用、あるいは、血液中のアセトアルデヒドという有害物質の刺激作用のためです。

また、睡眠誘導物質であるメラトニンの分泌が減ってしまうことも、原因に挙げられます。私たちの体は睡眠中、抗利尿ホルモンが分泌されてトイレに起きなくてすむようになっています。

しかし、アルコールの利尿作用が強いと、トイレに起きるようになってしまいます。アセトアルデヒドはアルコールが分解されてできる物質で、二日酔いの犯人です。
神経には、休息モードをつくる副交感神経と、活動モードをつくる交感神経とがあります。睡眠中は、もちろん副交感神経が優位になっているのですが、アルコールが入るとアセトアルデヒドが交感神経を刺激し、寝ている途中で目覚めてしまうことも少なくないのです。そして、メラトニンの分泌も抑制されてしまいます。寝る前の飲酒は睡眠の質を大きく低下させ、熟睡をさまたげます。酒を飲むときは寝る三時間くらい前までに終え、酔いが覚めてから就寝するといいでしょう。

太らない週末の睡眠方法

人にはみな、「体内時計」があります。体内時計をきちんとリセットできている人は、「良い眠り」を得ています。時計と言っても、目からの情報を伝達する視神経に関係する神経細胞群なのですが

この時計は1日24時間の本当の時計と異なり、1日25時間(もっと長い人もいる) で機能します。そのため、私たちはつねに25時問を24時問に合わせ直して生活しています。

この時計は毎朝、太陽の光を浴び、目の神経を通る光の情報をキャッチすることで時間をリセットし、24時間の生活リズムに合わせています。じつは、誘眠ホルモンのメラトニンの分泌をコントロールしているのが、体内時計なのです。

2周25時問の体内時計に合わせてメラトニンが分泌されると、分泌が始まる時刻が、毎日1時間ずつ遅くなっていきます。

ある日、メラトニンの増加が夜10時に始まったとすれば、翌日は夜11時、翌々日は午前0時…10日後には午前8時に始まることになってしまいます。そうならないのは、毎日、体内時間をリセットし、ズレを修正しているからです。体内時計を合わせそこなうと、睡眠トラブルが起こります。たとえば、いつも0時に寝て、7時に起きている人が、休日の土、日曜の2日間、午前10時過ぎまで寝ていると、体内時計は生活時計より2時間遅れになって、乱れが生じます。
それで、日曜夜から月曜朝にかけて、いつもどおり午前0時に寝て、朝7時に起きようとすると、なかなか寝つけず、起きるのがつらくなります。

7時に起きても、五時に起きるのと同じような感覚になるからです。ですから、休日の朝もいつも起きている時間に太陽の光に当たって、体内時計をきちんとリセットします。ふだん、朝7時に起きているならば、とにかく、いったんはその時問に起きて太陽の光に当たること。眠り足りないときは、20分程度の仮眠をとればいいのです。

その日の事情で起床時間をころころと変えていたのでは、メラトニンが正常に働く睡眠リズムが身につきません。気をつけたいのは、「寝る時刻が遅くなって睡眠時間が短くなっても、起床時間は変えない」ということです。また、遅く寝た翌朝にいつもの起床時間を守ると、日中に眠くなります。このとき、眠気にまかせてだらだらと昼寝をしてしまうと、夜、寝つけなくなります。したがって、「睡眠時間が短くなっても起床時問を変えない」「いつもと同じ時刻に起きて太陽の光に当たる」「どうしても昼寝が必要なら、20分程度に」を守って、メラトニンの正常な分泌サイクルを保ちます。

この三原則が習慣化されれば、いつでも「良い眠り」が得られるようになります。41歳のBさん(男性) は、警備会社で働いていました。勤務は交代制で、夜勤明けの日の夜にうまく寝つけず、熟睡できないのが悩みでした。

本来、眠っているべき時間に働く仕事は、生活のリズムが乱れて当然です。と言っても、個人の都合で勤務体制を変えるわけにはいかないので、眠る工夫をするしかありません。そこでBさんは、夜勤明けの朝、できるだけ太陽の光に当たらないようにしました。光に当たってしまうと、誘眠ホルモンのメラトニンの分泌が少なくなり、眠気がなくなってしまいます。濃いサングラスをして帰宅し、昼ごろまで寝ることにしました。午後まで寝ていると、夜、眠れなくなるからです。そこで,Bさんは帰宅後、すぐに4時間ほど眠り、昼ごろに起きて、また午後3時ごろに20分程度の仮眠をとることにしたのです。30分以上も眠ってしまうと、メラトニンの誘眠力が弱まって夜の寝つきが悪くなります。
仕事の都合で生活が不規則になっても・起床時間は変えてはいけません。体内時計が乱れて、メラトニンが規則正しく分泌されなくなるからです。その結果、やがてBさんは、帰宅後すぐに眠れるようになりました。昼間でも、深い眠りが得られると成長ホルモンが分泌され、体の機能が健全化されます。Bさんの夜の寝つきが良くなつたのは、言うまでもありません