太らないための体の動かし方

寝る前のストレッチが体を柔軟にする

「太らない体」をつくるための「軽い運動」の最後は、ストレッチです。じつは、「太らない体」は「やわらかい体」とも言えるのです。

有酸素運動にも筋力トレーニングにも、事前、事後のストレッチが欠かせません。事前のストレッチ(準備運動) は体を温め、筋肉や関節をほぐして動きを良くします。事後のストレッチ(整理運動) は、筋肉の血流を良くし、疲労回復を早めます。筋肉は加齢にともなって柔軟性が低下し、硬くなってきます。

筋肉が硬くなると、関節の動く範囲(可動域)が狭くなり、動かしたときなどに無理がかかりやすく、ケガをするリスクが高くなります。ストレッチで筋肉をゆっくり伸ばすこれを繰り返していると柔軟性が高まります。すると筋肉や関節にかかる負担が軽減され、ケガを防げるというわけです。

また、「ストレッチを続けることで高血圧が改書される」「乗鞍世の高い人は動脈硬化度が低い」ということもわかっています。さらにストレッチには「太らない体」をつくる効果もあります。

それは「リラクゼーション効果」があるからです。これは最近、明らかになってきたことです。30分くらいかけて全身の筋肉を順番に伸ばしていくと、脳波にはアルファ波が増加します。ストレッチによってストレスがやわらいで気分も安定し、ホルモンのバランスもよくなり、疲労回復も進むのです。

ストレスは、正常なホルモン分泌を妨げ、結果的に「太る体」のもととなります。1日の終わりに、ほんの5分のストレッチで、その日のストレスを解消する。これも「太らない体」をつくる習慣なのです。ストレッチには、4つの注意事項があります。

  1. 時間を20秒以上かけてゆっくり伸ばすこと。反動はつけないようします。
  2. 伸ばす筋肉や部位を意識して行なうこと。
  3. 痛みがなく、気持ちがよい程度に伸ばすこと。痛みが起こると、筋肉が硬直して効果が低下します。
  4. 呼吸を止めないこと。ゆっくりと深い呼吸をしながら、筋肉を伸ばします。胸部を圧迫するようなポーズでは呼吸が止まり、血圧が上がってしまうおそれがあるので、呼吸を意識して行ないましょう。

ストレッチを行なうときは、全身の筋肉をくまなく伸ばすのが理想的ですが、20~30分ではできません。したがって、歩くなど運動前は下肢を中心に、デスクワークの後は下肢・腰を中心に、風呂上がりは腹・背・首を中心にというように、そのときどきで伸ばす部位を決めて行ないます。

どの部位でも、伸ばす筋肉(伸筋) と曲げる筋肉(屈筋) が対になつてつくられているので、前後、左右、斜め、ねじりと動く方向に動かせば、その部位の筋肉をまんべんなく伸ばすことができます。私自身は、週一回スポーツストレッチに通い、体の姿勢のケアをしてもらっています。定期的に専門家に姿勢を見てもらうことは、毎朝、鏡で自分の顔を見るようなもので、きわめて重要なことです。

肥満解消に必須の筋肉で大切なのは4つ

「太らない体」をつくるための「軽い運動」には、筋力トレーニングもあります。最近の研究で、筋力トレーニングは若返りホルモン「DHEA」の分泌を良くする、ということがわかってきました。
「DHEA」は加齢にともない、だんだん分泌量が減ってきます。しかし、軽い筋肉運動をしていれば、その分泌が促されるのです。また、筋力トレーニングは、基礎代謝量を増やすのに効果的です。
つまり、脂肪燃焼の効率を上げることになります。当然、筋肉量も増えるので、「中年太り」の予防・解消に重要な運動なのです。基本的な体の動きをつくる筋肉として重要なのは、次の4ヶ所の筋肉です。

  1. ひざを伸ばす太もも前何の大腿四頭筋
  2. ひざを曲げる太もも後面の「ハムストリング筋」
  3. お尻の「大殿筋」
  4. 上体を支える「腹筋群と背筋群」

これら下半身の筋力は、体のバランスを維持し、立つ、歩くという基本的な動きをはじめ、さまざまな体の動きをつくるうえで非常に大切な役割を持っています。

40歳を超えるとこれらの筋力は予想以上に低下して、足が上がりにくくなつたり、もつれたり、つまずきやすくなったりします。下半身の筋肉は歩くことでも鍛えられますが、筋力トレーニーングがもっとも効果的です。筋力トレーニングは成長ホルモンの分泌も促します。

成長ホルモンはおもに睡眠中に分泌されますが、筋肉運動後にも分泌されます。筋肉量を増やしたりする作用があって、若返りにも効果があります。さらに、筋肉運動を継続することによって、骨董が増加したり、男性ホルモン(テストステロン) が増える効果も期待できます。

また、筋肉運動によって生じる乳酸には、普段、大気汚染や水質汚染によって知らないうちに摂取してしまっている有害金属を、排出させる作用があることもわかってきました。

乳酸は運動後に生じるので、疲労物質と見られてきましたが、最近では人体にとって有益な働きをしていることがわかってきました。

このように、筋力トレーニングは有酸素運動に負けず劣らず健康の維持・増進に役立ち、「太らない体」づくり、生活習慣病予防には欠かせない運動なのです。40代、50代は、筋肉が衰えはじめる年ごろです。簡単なものばかりですから、すぐにでも筋力トレーニングを始めましょう。

ただし、動けなくなるほどの過度な有酸素運動と同様、無理をすると筋肉を傷めて炎症を起こします。体内に炎症があると、そこから「活性酸素」が大量発生し、かえつて体の「錆び」を進行させることになってしまいます。有酸素運動にもコツがあるように、筋力トレーニングにもコツがあるのです。

太っている人ほど座っている時間が長い

「運動を始めると、運動不足になる! 」というジョークがあります。ここで言う運動不足は、日常生活の活動量を含めたトータルの活動量が少ない、という意味です。

「中年太り」を予防・解消できるかどうかに、意外と大きく関わっているのが日常生活の中での細々とした活動つまり、「生活の中で少しずつ動く」ことです。

毎日、トレーニングウエアに着替え、スポーツシューズを履いて、1時間くらいウォーキングをしている人がいます。しかし、万歩計をつけてみると、1日7000歩程度という場合がよくあります。運動していることで安心し、それ以外の時間はほとんど座っているからです。だから、運動だけでなく、運動以外の日常での活動量も重要なのです。

この活動を「NEAT= ニート/非運動性活動によるエネルギー消費)」と言います。ちょっとした移動で立ったり、歩いたりといった細かい活動を指します。近

年、アメリカの研究者が「肥満の人と肥満でない人を比較した結果、肥満でない人は1日350kcalも消費エネルギーが多かった」と発表して以来、「NEAT」が注目されるようになりました。

「肥満の人が1日のうち立っている時間は373分、座っている時間は57分だった」のに対し、「肥満でない人は立っている時間が526分、座っている時間が470分だった」のです。1日350kcalも違えば、1ヶ月で15000~1840kcal、1年で127500kcalになります。

これが体脂肪として蓄積されれば、1年で4kgも太ってしまうことになります。ですから、肥満を防ぎ、健康を維持・増進するためには、運動以外の時間もできるだけ体を動かすようにします。とくに座って行なう仕事に就いている人は、要注意です。

「仕事中は、体を動かす機会なんてない! 」と思われるかもしれませんが、じつは、少し意識するだけで、チョコチョコと動く機会が見つかるはずです。たとえば、

  • 誰かに用事を伝えるときは、社内電話を使わずに相手に直接会って伝える
  • デスクワークを1時間したら、気分転換に5分ほど立って歩く
  • 数階の移動にはエレベーターではなく階段を使う

自宅でも

  • ごみ捨てなどの家事を買って出る。
  • アレビはリモコンを使わずに立っていって、本体で操作する

1つひとつは小さなことでも、日常的に、チョコチョコと動くことが大切なのです。こういった工夫をして、日々の「NEAT」を増やしましょう。