太っている人ほど座っている時間が長い

「運動を始めると、運動不足になる! 」というジョークがあります。ここで言う運動不足は、日常生活の活動量を含めたトータルの活動量が少ない、という意味です。

「中年太り」を予防・解消できるかどうかに、意外と大きく関わっているのが日常生活の中での細々とした活動つまり、「生活の中で少しずつ動く」ことです。

毎日、トレーニングウエアに着替え、スポーツシューズを履いて、1時間くらいウォーキングをしている人がいます。しかし、万歩計をつけてみると、1日7000歩程度という場合がよくあります。運動していることで安心し、それ以外の時間はほとんど座っているからです。だから、運動だけでなく、運動以外の日常での活動量も重要なのです。

この活動を「NEAT= ニート/非運動性活動によるエネルギー消費)」と言います。ちょっとした移動で立ったり、歩いたりといった細かい活動を指します。近

年、アメリカの研究者が「肥満の人と肥満でない人を比較した結果、肥満でない人は1日350kcalも消費エネルギーが多かった」と発表して以来、「NEAT」が注目されるようになりました。

「肥満の人が1日のうち立っている時間は373分、座っている時間は57分だった」のに対し、「肥満でない人は立っている時間が526分、座っている時間が470分だった」のです。1日350kcalも違えば、1ヶ月で15000~1840kcal、1年で127500kcalになります。

これが体脂肪として蓄積されれば、1年で4kgも太ってしまうことになります。ですから、肥満を防ぎ、健康を維持・増進するためには、運動以外の時間もできるだけ体を動かすようにします。とくに座って行なう仕事に就いている人は、要注意です。

「仕事中は、体を動かす機会なんてない! 」と思われるかもしれませんが、じつは、少し意識するだけで、チョコチョコと動く機会が見つかるはずです。たとえば、

  • 誰かに用事を伝えるときは、社内電話を使わずに相手に直接会って伝える
  • デスクワークを1時間したら、気分転換に5分ほど立って歩く
  • 数階の移動にはエレベーターではなく階段を使う

自宅でも

  • ごみ捨てなどの家事を買って出る。
  • アレビはリモコンを使わずに立っていって、本体で操作する

1つひとつは小さなことでも、日常的に、チョコチョコと動くことが大切なのです。こういった工夫をして、日々の「NEAT」を増やしましょう。

1日3回10分ずつ歩く

「歩く」というと、「1日1万歩」が頭をよぎる人も多いことでしょう。たしかに厚生労働省をはじめ多くの専門機関が、1日8000歩~10000万歩を推奨しています。
「1日10000歩」とは、1日中の全活動の歩数です。仕事や通勤、買い物や家事といった生活活動での歩数(生活活動量) と、その他、意識的に行なう運動・スポーツ(ウォーキングやジョギングなど) での歩数(運動量) の合計ですが、じつは、普通歩行だけでも、1日60分」ほど歩いていれば十分「1日10000歩」は、達成できます。もちろん、よほど日常的に歩くのが「好き」という人でなければ、「1日60分」も歩くことはないでしょう。

しかし、逆に言えば、普通歩行「だけ」でも、「1日60分」で「1日10000歩」は満たせるのです。デスクワークが多い人でも、意識的に少し、通勤に徒歩をまじえたり、会社でも階投を使ったりなど、動く機会を持つようにすれば、意外と簡単に達成できます。
「1日10000歩」は、それほどハードルの高い目標ではありません。

このように、日常の無意識的な活動に、意識的な運動を補足するも適しているのが、「歩き」なのです。それにもっとここで改めて言っておきたいのが、「10分を1日3回、週4日、計2時間」で十分だということ「短い時間で、回数を多く歩く」のがもっとも効果的な歩き方だということです。必死になって毎日歩く必要もありません。「1日10000歩」= 「普通歩行60分」と言うと、「60分のウォーキング」で一気に満たそうとする人が少なくありません。その大半は、健康のためのウォーキングは、1時間ほどは歩かなければ効果がないと、思い込んでいます。たしかに、以前は「脂肪を燃やすなら、30分以上続ける必要がある」と言われていました。

「運動のエネルギー源は糖なので、まず糖を燃やしてからでないと脂肪は燃やせない。だから時間がかかる」という理由でした。しかし、この「燃焼順番説」は否定されています。この章の冒頭で触れたように、「軽い運動」、つまり個人感覚で「ややきつい」くらいに歩けば、ホルモンの分泌がよくなって、結果的に肥満が抑えられるのです。

最近の研究で、「60分続けて歩く」より、「10分ずつの細切れ6回」のほうが、血圧を下げるなど健康面でいい影響を及ぼすこともわかってきました。歩くペースは時速6km、つまり一分間に100mから始めて、40代男性なら時速7km強、つまり1分間に100mを目標にします。
普通の歩行で時速4km、1分間約70mが平均ですから、運動不足の人にとっては1分間100mでも、10分間続けるのはけっこうきつく感じるはずです。でも、無理をしないで継続していれば、しだいに目標のペースで歩けるようになり、歩く距離も伸びてきます。具体的には、たとえば週5回の通勤のうち4日間は、朝、自宅から最寄駅まで行くのに15分をかけて歩く、という具合で始めるといいでしょう。

徐々に15分で歩ける距離が伸びてきたら、たまには1駅、2駅先まで少し時間をかけて歩いてみる、といったことにも挑戦してみてください。ただし、くれぐれも無理のないように、何より「継続すること」が大切です。

歩くときは、シューズをスニーカーに履き替えています。革のビジネスシューズでは足への負担が大きく、ひざや足首、かかとを傷めるおそれがあります。適切なのはジョギング用、ウォーキング用といったスポーツシューズで、底は柔軟性のあるもの、かかとはクッション性が高いもの、つま先は余裕があって窮屈でないものです。
スポーツ用品店などでは、ビジネスシューズのようなデザインで、こうした機能を持った靴も扱っています。「通勤用のウォーキングシューズ」を1足、持っておいてもいいでしょう

効果大「駅の階段」を使う

実際の例です。47歳のAさん(女性)は、保険外交員をしています。階段を駆け上がると息切れしたり、心臓がドキドキしたりしていました。心肺機能が衰えていたのです。
運動を中心に改善を図ることにしたのですが、多忙のため、その時間がとれません。そこで、日常生活の中で運動不足を補うことにしました。

通勤時の自宅から駅の間は、これまでは片道10分の普通歩行でした。そこで、行きは階段を上がるコース、帰りは坂道を上るコースに変え、階段、坂道以外は速歩にしました。速歩は普通歩行の1.3倍、階段上がりは普通歩行の2.5倍、坂道上りは普通歩行の2倍(ただし勾配の程度による) くらいの運動強度です。

普通歩行とは、平地を時速約4kmで歩くことです。これは「らく」のレベルですが、運動能力が低下している人にとっては、時速4kmでも「ややきつい」というレベルになることもあるので、注意が必要です。

Aさんは、行きは「階投上がり3分、速歩5分」、帰りは「坂道上り3分、速歩4分の通勤」に変え、従来の通勤の2.5五倍近い活動量を確保しました。数ヶ月後、心肺機能が高まり、階段もらくに駆け上がれるようになっています。このように、運動を行なうときには、まず心拍数も目安にしながら自分の運動能力を知り、それに応じて頻度、強度、時間を決めます。

たとえば、運動などこの10年間いっさいやっておらず、駅の階段を上がるだけでも息切れする… といった人は、まず自宅から駅までの道のりを3分間だけ遠回りするなど、小さなことから始めます。続けていれば、必ず効果が実感できるはずです。「そういえば最近、駅の階段を上がってもあまり息切れがしなくなってきた」と感じたなら、3分間だけ遠回りしていたのを5分にする、1駅分歩く、などと徐々にレベルを上げていけば、ゲームをクリアする感覚で楽しく運動を続けられるでしょう。

もちろん、レベルを上げるごとに、あなたの体は、どんどん「太らない体」になっていきます。再度、注意していただきたいのは、あくまでも無理は絶対禁物ということ。

いくら軽い運動でも、続けていると心拍数が上がってきます。はじめは「かなりらく」と感じるレベル(心拍数103程度) でも、10分、20分と続けるうちに「かなりきつい」と感じるレベル(心拍数158) に上がってくることも多々あります。ここで無理せず、休むかペースを落とすことが肝心です。

なまじ体力に自信がある人は、「非常にきつい」と感じるレベルに達するまでがまんして続行してしまいがちですが、息も絶え絶えで積黒的に「激しい運動」になってしまっては逆効果です。無理をすると「活性酸素」がたくさん発生して、肥満のもととなる体の「錆び」が進んでしまうからです。「太らない体」をつくるための運動は、がんばったり、人と競争したりしてはいけません。

太らないための「歩き方」9つのコツ

有酸素運動で、もっとも手軽で効果的なのはもう定番ですが「歩くこと」です。道具も何も必要なく、身1つですぐに始められる有酸素運動としては、ほかに「走ること」も挙げられますが、現時点で運動不足の人だと、ひざや心臓に無用な負担をかけてしまうリスクがあります。
もっとも安全で、誰でもできるのは、やはり「歩くこと」です。「通勤」といった日常の中で行なえるので、誰にでも簡単に始められます。と言っても、これまでどおり、ただ漫然と歩いていればいいというものではありません。意識して、運動の強度が「ややきつい」くらいに歩くのが効果的です。歩きの場合、「ややきつい」という強度は、前項で述べたことのほかに次のようなことが目安になります。

  • いつも歩いているより速い。
  • ちょっと息が弾むが、笑顔が保てる。
  • 長時間続けられるが、少し不安を感じる
  • 5分程度で汗ばんでくる。
  • 10分程度で、すねに軽い筋肉痛を感じる。

運動不足の人は、いきなり「ややきつい」と感じるレベルに上げないで、まず「かなりらく」と感じるレベルから始め、徐々に上げていきます。また、続けていると、強度のレベルがどんどん上がっていくので、その際にはペースを落として「ややきつい」を保つようにします。どれくらい歩けばいいかは、「頻度は週4日」1日に10分くらいを細切れで3 回歩き、週合計2時間はど歩く」を目安にしてください。歩く姿勢も重要です。次の手順での動作が「理想的なフォーム」とされています。

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  1. 視線を遠くに向ける。
  2. あごをひく。
  3. 胸を張る。
  4. 肩の力を抜く。
  5. 背筋を伸ばす。
  6. ひじを曲げ、腕を前後に大きく振る。
  7. 脚を伸ばす。
  8. 歩幅はできるだけ広くとる。
  9. かかとから着地する。

ただ漫然と歩くだけでは味も素っ気もなく、効果も上がりません。でも、こ、つしたフォームに気をつけながら、背筋を伸ばして歩いていると、だんだん気持ち良くなってくるはずです。

理想は60秒で120mのはやさ

ここで、あなたの全身持久力を試してみましょう。あなたにとっての「簡単な運動」の適度を判断する基準になります。全身持久力は、次の手順でチェックできます。

まず2分間、あなた自身の感覚で「ややきつい」と感じる速さで歩いて、その距離を測ります。そして、計った距離(メートル) から、以下の表で評価します。
この表は、全身持久力の目標値を表わしています。測定した距離が、表の「3分間で歩いた距離以上」の場合は、目標となる全身持久力にほほ達しています。表の「距離未満」の場合は、目標に達していません。場所や測定法の問題があって、個人で正確に行なうのはむずかしいかもれませんが、今の自分にどれくらいの全身持久力があるのか、およその見当はつくでしょう。
表の「歩行速度」は、「ややきつい」と感じるレベルでの速さです。

40代であれば、1分間に120mの速さが「ややきつい」のレベルです。この速さで歩いたとき「きつい」「かなりきつい」と感じるようだと、目標に達していません。全身持久力が目標に達していない場合は、高めるための「軽い運動」を行ないましょう。

有酸素運動なら何でもかまいませんが、どれも「ややきつい」くらいで続けると、日に見えて効果が出はじめるはずです。その際の「ややきつい」は、個々で異なりますが、目安として「心拍数」で判断してください。左腕の親指のつけ根から3cmほど上の手首に触れると、血管が脈打っているのがわかる場所があります。
ここに右手の人差し指・中指・薬指を3本そろえて軽く当てて計ります。手首の脱が見つかりにくい人は、左胸に手を当て、心臓の打つ回数を数えてください。首すじに手を当てて、脈拍を計ってもいいでしょう。
1分間きっちり計らず、15秒間計った回数を4倍してもかまいません。腕時計型の心拍数の計測器も多種、市販されています。「ややきつい」は最大心拍数の5~7.5割と言われています。最大心拍数とは、体が動かせなくなるほどの運動をしたときの心拍数です。およその目安として、「220マイナス年齢」で求められます。

したがって、仮に40歳で計算してみますと、90~35
が、ちょうどよい心拍数、ということになります。最初は控えめに設定して、徐々に上げて行ってもいいでしょう。闇雲に体を動かすのではなく、最初は少し面倒でも自分に適したレベルの運動を続けることが、「太らない体」への近道です。

1分間で120mが太らない人の歩く速度

男性 20代 30代 40代 50代 60代
3分間で歩いた距離 375 360 360 345 345
速度(m/分) 125 120 120 115 115
女性 20代 30代 40代 50代 60代
3分間で歩いた距離 345 340 330 315 300
速度(m/分) 115 115 110 > 105 100

40代から自分の体を知る

「太らない体」をつくる最初の習慣は、「軽い運動」です。運動と言っても、ただ体を動かせばいいというものではありません。「太らない体」をつくるための運動は、3つあります。

  1. 有酸素運動
  2. 筋力トレーニング
  3. ストレッチ

の3つです。

どれも、「軽い運動」です。すでに、「中年太り」になっている人でも、毎朝走ったり週に何回もスポーツジムに通ったりして強めの運動をする必要はありません。

「太らない体」をつくるには、「軽い運動」で十分なのです。「軽い運動」とはいつでもどこでも気軽にやれるもので、40代から「太らない体」をつくるコツです。
このコツは、若返りホルモンの「DHEA」の分泌を促して、「いつまでも若いい体」でいられるようにするものでもあります。
ホルモンの分泌を正常化して、肥満や病気につながる老化を抑えるのです。

まず、1の有酸素運動とは、酸素を体に取り込み、それによって体内の糖質や脂肪をエネルギーとして消費する運動です。体内エネルギーは、食事でとった糖質や脂質(脂肪) に酸素を反応させてつくり出されます。

また、つくり出すときだけでなく、体内エネルギーを実際に消費するときにも、酸素を必要とします。なぜ有酸素運動が「太らない体」をつくるのに役立つのでしょうか。ひと言で言えば、有酸素運動によって、全身持久力が高まるからです。全身持久力とは、言い換えれば「スタミナ」のこと。少し動くと息切れがし、動けなくなる人を「スタミナがない」、長く動いても息切れせずに動ける人を「スタミナがある」と言います。このスタミナが、全身持久力なのです。
したがって、短距離走でのスピードがどこまで続くか( スピード持久力)、腕立て伏せのように一部の筋肉を使ってどのくらいできるか(筋持久力)、といった「持久力」とは区別されます。

全身持久力が高くなるということは、少ない酸素で多くの活動が行なえるということです。全身持久力の低い人は、高い人に比べて心臓・血管の病気にかかるリスクが高く、死亡率が四〜五倍も高いとされています。したがって、有酸素運動で全身持久力を高めておけば、肥満を抑えるのはもちろん、心臓や血管の病気を予防することもできるのです。

有酸素運動は、運動中に「ハア、ハア」というリズミカルな呼吸になるのが特徴で、長く続けられる運動は、歩く、走る、自転車に乗る、泳ぐ、といった運動です。年代に関わらず、この「ハア、ハア」という呼吸になる程度にしておくことが目安となります。「ハア、ハア」が「ゼイゼイ」「ヒィヒィ」と呼吸が苦しくなると、やりすぎだということです。

反対に、無酸素運動瞬間的にパワーを発揮する短距離走や、息を止めて行なうウェイトトレーニング、腹筋や腕立て伏せなどの筋トレは、心肺機能を高めません。無酸素運動は、有酸素運動のように取り入れた酸素を利用してエネルギーをつくつたり、使ったりするのではなく、すでに体内にためられているエネルギーを使う運動です。腹筋も腕立て伏せも、2~3回やるくらいは運動のうちに入りませんが、10回もやれば無酸素運動になります。また、有酸素運動でも、肩で呼吸をするはど激しくやってしまうと、無酸素運動に近くなって効果も低くなります。

23時には就寝するように習慣づける

「ぐっすり眠る大人は太らない」「寝る子は育つ」と言いますが、大人の老化防止にも睡眠は欠かせません子どもの成長を促す成長ホルモンは、思春期をピークに加齢により分泌量は低下しますが、大人でも分泌されています。
この成長ホルモンが分泌されるのが、おもに睡眠中なのです。

一般的に、夜10時から午前2時までの間を十分に眠っていれば、分泌がさかんになります。せめて夜11時には、床につきたいものです。

このホルモンには、日中に紫外線を浴びて傷ついた皮膚や、運動などで傷ついた筋肉を修復したり、疲労のもとを除去したり、免疫活動を高めたりと、眠っている間に体をメンテナンスする働きがあります。
疲れて弱った体の回復を促します。つまり、「太らない体」を維持してくれるホルモンなのです。だから「寝る子は育つ」だけでなく、「ぐっすり眠る大人は体が若い」と言えるのです。成長ホルモンの分泌が悪くなると、40代・50代には警告となるような次の症状が現れます。

  • 太り出す
  • 疲労が蓄積する
  • かぜをひきやすくなる
  • 食欲がなくなる
  • 食の好みが変わる
  • 皮膚が荒れる
  • 筋肉痛が続く

40歳を境にして、これらの症状に1つでも思い当たれば、それは老化が始まって「太りやすい体」に変わりつつある、とう体からのサインです。
実際に、「太り出す」ことが症状の1つになっています。そろそろ40代だから、これらの1つや2つはあるのは当たり前だ、と軽く見てはいけません。1つでも出てくれば、次々に症状が現れるのは時間の問題で、「中年太り」が進むだけでなく、老化もどんどん速まっていくのです。じっは、老化防止(アンチエイジング) の歴史は、この成長ホルモンの研究から始まっています。

成長ホルモンの分泌量が加齢とともに低下することは、以前からわかっていました。また、近年になって、成長ホルモンが不足すると、先に挙げた「太り出す」などといつた老化現象が現われることもわかってきました。そこで、アメリカのダニエル‥ フドマン博士という研究者が、高齢者の成長ホルモンを増やせば老化現象が改善するのではないか、と着目します。

1990年、博士は「正常な61歳から81歳までの男性に注射投与したところ、体脂肪が減ってスリムになった」という研究結果を発表しました。そのうえ、筋肉量が増えて運動能力がアップし、血中コレステロールが減って動脈硬化のリスクが低下したことも確かめられています。

博士の発表後、成長ホルモンは「若返りの薬」として注目され、世界中で研究が盛んになりましたが、現在では異論が多く唱えられています。外部から成長ホルモンを補充することによる副作用や、発ガンとの関係などが指摘され、成長ホルモン補充療法は特殊な病態を除いては安易に行なうべきではないとされています。

次のような方法で成長ホルモンレベルを維持する方法もあります。それは、まず第1一に、「良い睡眠」を確保すること。
第2に、寝る前には糖質やアルコールを過度にとらないこと。
第3は、軽い運動。
そして第4は、血液中の「DHEA」レベルを維持することです。

とくに40代・50代に「DHEA」を重要視してほしい理由は、これが男性ホルモンであるテストステロンの材料になるからです。「DHEA」は、男性ホルモンの材料になります。男性ホルモンの1つ、テストステロンは、男女を問わずきわめて重要な働きをしていますが、その役割の代表は、筋肉をつくる働きです。脂肪細胞の中にある「幹細胞」と呼ばれる細胞が、筋肉になるか、それとも脂肪になるかを決定づけているのが、テストステロンである可能性が最近の研究でわかってきました。

ところが、帝京大学の研究によると、40代、50代の男性のテストステロンレベルが60代、70代の男性よりも低いという衝撃的なデータが報告されているのです。原因は明らかではありませんが、その意味でも、「40代は体の曲がり角」と言えるのです。

ここで「止められる老化」を確実に止めるかどうかで、その後の体、ひいては人生が変わってきます。と言っても、気をつけなければならないのは、ちょっとした日常的な習慣だけなのです。

若返りホルモン「DHEA」が健康にも影響する

人を若返らせるそんなホルモンがあります。それは「DHEA」。正式には「デヒドロエビアンドロステロン」というホルモンです。コレステロールを原料にして、副腎皮質でつくられています。
「DHEA」は、男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストラジオール))の材料になるほか、多様な働きをしています。
筋力、免疫力から意欲、行動力まで、多くの機能を維持し、さらには発がんの抑制、骨粗鬆症の予防といった働きも認められています。

近年、欧米で「DHEA」の研究が進み、「DHEA」の血中濃度が低い人に「DHEA」を補充すると、若々しく、元気になることがわかってきました。
このことから、「DHEA」は「若返りホルモン」と言われるようになったのです。
数年前まで、「DHEA」は歳をとるにつれて分泌量が減少するとされていました。
その血中濃度は25歳ころをピークに、40代で約半分に低下する、とまで言われていたのです。しかし、最近の研究結果は、少し違った見解を示しています。高齢でも若々しく元気で活動的な人は、「DHEA」の血中濃度が20代とあまり変わらないことがわかってきたのです。
あなたの今の「DHEA」血中濃度は、はたしてどれくらいでしょうか。「DHEA」の血中濃度が低くなると、次のような「3つの低下」症状が出てきます。

  1. 「筋肉量」「筋力」が低下する
  2. たとえば、階段や坂道を上るのがきつくなります。さらには、つまずいたり、筋肉痛になったりすることが多くなります。

  3. 「免疫力」が低下する
  4. たとえば、傷が治りにくくなったり、かぜをひきやすくなったりします。

  5. 「意欲」が低下する
  6. 仕事に対するやる気を失うだけではありません。これまで好きだったこともおっくうに感じるようになります。

「DHEA」の血中濃度が下がる一大要因は、やはりストレスです。ストレスホルモンも「DHEA」も、コレステロールを原料として副腎(腎臓の上にあり、多くのホルモンを分泌する器官) でつくられます。
そこで、強いストレスに対応するためにストレスホルモンが大量につくられると、コレステロールが不足するつまり、「DHEA」は「材料不足」に陥ってしまうのです。

すると、さまざまな不調が現れます。「DHEA」は、男性ホルモンの材料でもあります。男性ホルモンは、男性だと精巣(華丸) でつくられています。女性は副腎や脂肪でつくられます。性機能のほか、筋肉量や筋力の維持にもかかわっており、「活動する力の源」とも言うべきホルモンです。
つまり、若苦い体、太らない体に不可欠なホルモンと言えます。

ところが、現代人は、とくに男性ホルモンの分泌低下が進みやすい、と言われています。現代人は、絶えずストレスにさらされています。そのため、「DHEA」から男性ホルモンをつくる過程で、しょっちゅうストレスホルモンの過剰分泌の妨害を受けてしまうためと考えられています。若々しい心身を復活させ、維持するためには、適切な休養と睡眠をとって、ストレスをやわらげなければなりません。

ストレスが原因で男性ホルモンが減るのは肥満の原因にも

「ストレス太り」という言葉がありますが、まんざら嘘でもありません。40代の体の大敵その3、「ホルモン分泌の変化」は、ストレスと関係している場合が少なくないからです。

精神的なストレスを受けると、体は副腎皮質(腎臓のすぐ上にあり、多くのホルモンを分泌する器官) からストレスホルモン( コルチゾール) を分泌します。
強いストレスや激しいショックを受けた場合にも大量に分泌され、「ここ一番」とがんばるときなども、ドッと出ます。ストレスホルモンは、こうして過度なストレスから、体と心を守ろうとしているわけです。ただ厄介なのは、このホルモンははかの部分でさまざまな悪影響を及ぼすことです。

ストレスホルモンは、ほかのさまざまなホルモンの分泌を妨げます。若さを保ち、免疫力を維持するホルモン(DHEA) をはじめ、性機能にかかわるホルモン(テストステロン)、睡眠に関係するホルモン(セロトニ ン、メラトニン) などの分泌を減少させてしまうのです。

このように、老化の一大要因となるストレスは、「中年太り」にも直結しています。ストレスを受けた際に分泌されるストレスホルモンには、筋肉からアミノ酸を取り出して、糖分に変える働きがあります。その結果として血糖値が上がります。すると今度は血糖値を下げるために、すい臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは細胞に働きかけて、血液中に増えた糖質を脂肪に変えていきます。こうした状態が続くと筋肉量が減少して、脂肪が増えてしまいます。また、ストレスによって、男性ホルモンが減ってしまうこともよく知られています。これは大脳の中枢にある性ホルモンの分泌をコントロールする器官がストレスによって十分に働かなくなるために起きる現象です。男性ホルモンは、筋肉を増やし脂肪を減らす代表的なホルモンです。

っまり、男性ホルモンの減少が続くと、筋肉がやせて、お腹周りの脂肪が増えやすい体型になってしまうということです。こうした状態が長く続けば、当たり前の結果として「中年太り」が進んでいきます。

夢の食べても食べても「太らない食べ方」

40代からの大敵の1つ、「糖化」についてです。体を構成する主要な成分は、タンパク質です。細胞も大部分がタンパク質で、酵素や脳の情報伝達物質もタンパク質です。その大事な成分が糖(ブドウ糖) によって変化します。これを「糖化(グリケーション)」と言います。

糖は生きるためのエネルギー源なので、生きている以上、「糖化」は避けられません。そうなると、「糖化」されたタンパク質同士がくっつき、絡み合います(プロテインリンケージ)。そのためタンパク質の働きが悪くなって、体の機能低下へとつながります。
体の機能が低下するということは、エネルギー消費も滞りがちになるということ。つまり、余分な脂肪がたまり、太りやすくなるということです。

たとえば「糖化」が脳の神経細胞に起こると、「うつ」になりやすいとされています。血管であれば、「糖化」で傷んだところに大敵その1、「酸化」が加わるとダブルパンチで動脈硬化がより発生しやすくなります。
また、血管が硬くなって血流が悪くなり、手足の冷えの原因にもなります。

また、皮膚の「コラーゲン」というタンパク質が「糖化」すると、肌の弾力がなくなり、極端に老けた印象になります。
こうした健康障害を引き起こす「糖化」は、言ってみれば、自転車の歯車の間に、油ではなく砂糖水を流し込むようなもの。

砂糖水をさすと、ベトつきが強くなって歯車が動かなくなり、自転車は使えなくなってしまいます。体にも、同じことが言えるわけです。糖は生きるためのエネルギー源ですから、生きている以上、「糖化」は起こってしまいます。

ただし、これも日常生活をちょっと見直すだけで、過剰な「糖化」が起こりにくい体内環境はつくれます。今日から、次の3つに気をつけた食生活を始めてください。

まず、「一気に大量に食べない」こと。これは個人差がありますが、1回の食事には最低でも20分かけます。これが目安です。
糖が血液で脳に運ばれると、満腹中枢から満腹のサインが出ます。それにかかる時間が20分程度なのです。つまり、食事をしている最中に、満腹サインを受けるようにするのです。そうすると、食欲が抑えられます。

2つ目は「糖質の多い食材はたくさん食べない」こと。穀類、イモ類、甘いものを控えることも大切です。

3つ目に、「十分に時間をあけて食べる」こと。6時問おきに3食をきちんととるのが理想ですが、現実はそうはいきません。ですが、せめて就寝3時間前には夕食を終えることを原則にして、朝昼をとります。
そして少し空腹感を覚えて寝ます。食べものを胃の中に残して寝ると消化に良くないだけでなく、吸収された栄養素が燃焼することなく脂肪として蓄えられてしまいます。

この3つが太らないための食べ方で、「太らない体」をつくる秘訣の1つです。「糖」は体の大切なエネルギーの1つです。ただ、とりすぎると「糖化」という悪い作用が過剰に働いてしまう。このことをぜひ覚えておいてください。