肥満の原因は唯一、炭水化物にある 炭水化物を制限するのは糖質制限食

こうした沖縄の現状とまったく同じなのが、先に紹介したアメリカの国家プロジェクトです。

肉や卵などをよく食べていたアメリカ人は、コレステロールが心筋梗塞の原因だとして、植物中心の食事に切り替えました。そのとき、平均寿命を急激に伸ばしていた日本を見本に、和食がヘルシーだとされて好まれました。

その結果、アメリカ人のコレステロール値は極端に下がりました。しかし、肝心の心筋梗塞は減らずじまい。逆に、肥満と糖尿病を増やす結果を導きました。

これは、肉をたくさん食べていた沖縄県民がそれを減らし、和食に切り替えたために肥満寧日本一になったのとまったく同じです。

もう1つ、沖縄で好まれる料理にソバがあります。よく間違えられるのですが、ソバといっても日本ソバではなく、沖縄ソバのこと。小麦粉で作った太麺を醤油ベースのスープで食べる、本土のうどんによく似た食べ物です。

ここで、「しっかり噛むダイエット」を思い出してください。その基本は、ひと口入れたら箸を置いて30 回噛むことでした。

ところが、うどんも沖縄ソバも、すするようにして食べるのが当たり前。極端にいえば、早食いするためにあるような料理です。食の本土化を進める沖縄県民は、昨今のヘルシー志向から肉の摂取を減らしました。

増えたのは主食、つまり米・パン・麺類の炭水化物です。その結果、長寿日本一の座から転げ落ち、逆に肥満寧日本一という不名誉な称号をもらってしまったのです。

もちろん、これは沖縄だけでなく全国に共通しています。肥満率が上がり、糖尿病患者数が増えているのは、日本人が摂取する主食の量が多すぎるからにほかなりません。

炭水化物食は、肥満の原因。肥満は、糖尿病の原因です。これらは、さまざまな形でリンクし合っており、そう簡単に割り切れない部分もありますが、大ざっばにいえば以上になります。厚生労働省の調査で、人口10万人あたりの糖尿病患者数で全国ワースト1になった都道府県は香川県でした。そこに、香川の人たちが大好きな讃岐うどんとの関係があるのではないかと考えるのが自然です。

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日本人の平均寿命を伸ばしたのは肉食

日本は、世界一の長寿国です。もう10年前の調査では平均寿命は、女性86.39歳、男性79.64歳でした。65歳まで生存する人の割合は、女性が93.6%、男性が86.9%。75歳までの場合は、女性が86.5 % 、男性が72.1 % に上ります。

しかし、これほどの長寿国になったのは戦後のこと。1947年(昭和22年) の平均寿命は、女性53.9歳、男性50.0歳でした。

明治時代は37歳程度で、大正時代にやっと40歳以上になったのです。世界的に見ても、日本は低寿命国でした。戦後の急速な伸びは、ほかの国とは趣が異なります。アメリカ、フランス、オランダなどの平均寿命は、1950年時点でも70歳前後でした。それらの国々が、戦後60年間で平均寿命を10年ほどしか伸ばしていないのに対し、日本は30年も伸ばしたのです。

理由は、動物性タンパク質摂取量の大幅な増加。つまり、肉食の急増にありました。大正初期には3 gしかなかったのに対し、1980年には39 gと飛躍的な伸びを見せています。

こうして近代日本人の食生活はヒト本来のデザインに沿ったものに戻り、だからこそ平均寿命を大きく伸ばしたのだといえます。スポーツ中継などを見ると、そのことをひしひしと感じます。

日本人の体格がよくなり、たとえば最近のフィギュアスケート選手などは手足も長く、とても美しく見えます。欧米の選手と比較しても、まったく見劣りしなくなりました。これは、米と野菜を食べてそうなったのではありません。平均寿命の伸びと同様に、肉食のおかげで体格がよくなったのです。

全国の肉消費が少なかった時代にも、沖縄県だけは本土と異なる食文化をもっていました。日常的に、ヤギやブタを食べる慣習があったのです。ご先祖の仏壇に供えるのは豚肉ですし、風邪をひいたら豚レバー入りのおかゆを食べ、非常食はポークの缶詰です。そのため、沖縄県民はずっと長寿を誇っていました。

ところが、「26 ショック」です。これを、食生活の欧米化のせいだとする人がいますが、まったくの事実誤認です。長い米国統治の時代があったため、本土に先んじて欧米風の食事が広まり、健康を害して早死にする人が増えたとする説ですが、沖縄にはもともと肉食文化がありました。沖縄県民の平均寿命を短くしたのは、ほかでもなく「ヘルシー」な和食だったのです。

肉をよく食べる欧米風の食生活のせいで沖縄県民の平均寿命が下がったとする説は、まったく当てはまらないといえるのです。
ところで、沖縄の人たちが普段どのような食事をしているか、皆さんはご存じでしょう
か。ゴーヤチャンプルーに代表される、独特の食材を使った沖縄料理ばかりを食べているとのイメージがあると思いますが、実際はそうではありません。県内に沖縄料理店はそれ
ほど多くありませんし、車で国道を走っていて目立つのは、和食の店ばかり。沖縄県民の食事は、すごい勢いで本土化を進めたのです。

 

日本は肉食が禁止されていた国

奈良時代から明治維新に至るまでの日本では、たびたび肉食禁止令が出されました。これは、世界でも珍しい国だそうです。

このことも、日本人を草食化する要因になりました。中でも米が重視され、江戸時代には貨幣と同じような扱いをされました。

現在、国家や地方自治体の規模はGNP (国民総生産) などの金額によって表されますが、江戸時代の日本では「加賀前田百万石」というように、米の収穫高を目安にしていたほどです。

以来、国民には米を大事にする文化が育ちました。正月には餅を食べ、風邪をひいたらおかゆ、保存食はおにぎりです。

今でこそ、1日に3食のご飯を食べていますが、そうなったのはつい最近のことでした。戦前の食事は、麦飯に一汁一業が当たり前。イモ類、根菜類、高野豆腐などがよく食べられていました。その麦でさえ、イモしか食べられない家庭から見れば賛沢品でした。米のご飯は、幻の食べ物です。

こうして、白くてきれいな米は庶民の憧れになりました。これは、現代日本人にも強く根づいています。茶碗に残ったご飯粒をお母さんに指摘され、「農家の人に申し訳ないから全部食べなさい」と叱られるのも、そのためです。

もう1つ、最近の日本人に特徴的なのは、麺類の人気ぶり。この20年ほどの問に、ラーメン店とパスタ店がものすごく増えたのも、その象徴でしょう。.ラーメン店だけでも、全国に4万軒あまりもあります。米を信仰する日本人は、麺類の消費も増やしました。もともと肉食が禁止されてきた歴史をもつ上、昨今のヘルシー志向で「肉を食べたら太る」の連呼です。こうして、肉を食べずに米や麺類ばかりを口にする国民性が育ったのが現代の日本です。