メタボリックシンドロームの意味

ダイエットには正しい知識が不可欠ですので、発信者は常に正確に伝えようとする気持ちがとても大切です。

医学用語の連発はなるべく避けたいのですが、簡単な言葉に置き換えることもできない部分もあります。

肥満やメタポリックシンドロームについての医学的な説明をしていきます。

ダイエットを必要とする、つまり肥満の状態にある人にはさまざまな体の変調を引き起こす危険があります。しかも、それらの症状は互いに影響し合い、Aが悪い人はBも悪くなり、B が悪い人はAも悪くなりやすいという特徴をもっています。

食事・飲酒・喫煙・睡眠不足・ストレス・環境要因などが引き金となって、体が悲鳴を上げるのが生活習慣病です。以前は成人病と呼ばれていましたが、未成年でも発症する場合があるなどの理由から、生活習慣病と改称されました。

これ自体は病名ではなく、生活習慣の乱れによって起こりうる症状の総称です。そういった事情から、生活習慣病にはいくつもの疾患が含まれます。がんも生活習慣病の一つですが、最も有名なのはやはり糖尿病でしょう。同時に、糖尿病はメタポリックシンドロームの代表格でもあります。

このメタポリックシンドローム。最近よく聞くようになった言葉ですが、細かい定義をきちんと理解している方は少ないものです。日本語に直訳すると「代謝症候群」という意味なのですが、そう説明されても余計にややこしくなるだけでしょう。

でも、大切なことなのでわかりやすく説明していきます。まず、「代謝」とは、体外から取り入れた物質を元に新たな物質を合成するなどして、エネルギーの出入りをする体内機能のこと。人間はもちろん、ほかの動物でもこの機能が働くことで、生命維持に大きく寄与しています。

一方の「症候群」とは、ある1つの原因によって生まれる、一連の身体・精神症状のこと。有名なところでは「エコノミークラス症候群」があり、これは長時間の飛行機搭乗などで同じ姿勢を強いられたことから血液の流れが悪くなり、その結果として血栓(血液の塊) ができてしまって呼吸困難などを引き起こす病気です。

蛇足ですが、エコノミークラス症候群を防ぐには水分摂取が重要です。

エコノミークラス症候群 | 桜島 活泉水による水分補給の効果

10年ほど前、サッカーの元日本代表の高原直泰選手が発病したことをご存じの方もいらっしやるかもしれません。ただし、高原選手が実際にはビジネスクラスを利用していたように、狭いエコノミークラス以外でも発病することを理由に「ロングフライト症候群」とすべきではないかとの声もあります。

ほかには、トラックやタクシーの運転手が発病した例もあるそうです。さて、メタポリックシンドロームに戻ります。その定義は、「内臓脂肪型肥満のうち、高血圧・高血糖・脂質異常症の二つ以上を合併した状態」です。つまり、内臓脂肪型肥満の人でも、たとえば脂質異常症のひとつしか症状がないのであれば、メタポリックシンドロームには該当しないことになります。

脂質異常症という言葉を聞き慣れない方がいらつしやるかもしれませんが、これは2007年まで高脂血症と呼ばれていた症状が改名したもの。文字どおり、血液に含まれる脂質の量が多すぎるか少なすぎる症状だと考えてください。

よく、タブツとした下腹をボンボンとたたきながら、「このメタボ腹が」 と言っている人がいますが、それは皮下脂肪。メタポリックシンドロームは内臓脂肪過多がベースなのですから、正確にいえばそれは誤りです。

付け加えると、内臓脂肪はどちらかといえば女性より男性のほうにつきやすい傾向があります。ですから、女性が下腹をたたいて「メタボ腹」と言っても、用語の間違いであるケースが多いのかもしれません(ただし、閉経後の女性は閉経前に比べて内臓脂肪のつきやすさがずいぶん上がります)。

でも、安心しないでください。ウェスト周りに脂肪がついている人のほとんどは、皮下脂肪も内臓脂肪もついているものです。一見すると痩せているのに、実は内臓脂肪だらけという「隠れ肥満」 の人もいます。

隠れ肥満についての詳細はこちらです。

ひと昔前までの医療には、内臓脂肪の概念さえありませんでした。コンピューター断層撮影装置(CT)が発明され、人体を輪切りにした画像を撮影できる技術が確立したことによって、やっと判明した医学的事実です。

日本では2008年から、特定健診が義務化されています。これは厚生労働省が国民に対し、増え続ける生活習慣病への意識改革と啓蒙を意図したもので、そこに、メタポリックシンドロームの概念を持ち込んだというわけです。診断の目安として、男性では腹囲約85 cm以上、女性では腹囲90 cm以上( ウェストではない点に注意)などといった規定があり、それが多すぎるとか少なすぎるとか、さまざまな議論が今も続いています。

日本と海外では規定が異なり、国内でも各学会が提唱する数値が違うのが現状ですので、これはしばらく収束することはないでしょう。

いずれにせよ、メタポリックシンドロームとは内臓脂肪型肥満を原因に、代謝という大切な体内機能にさまざまな異常をきたす可能性の高い状態のことだと考えてください。すべての根源は、肥満です。

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食物繊維が便秘の原因になっているという場合も

低カロリー・低コレステロールダイエットでは、タンパク質や脂肪分を抑えるとともに野菜の摂取をすすめています。そのとき、特に推奨されるのが、ゴボウ・ダイコン・キャベツなど繊維質の多い野菜です。

じつは、これも、まったくの間違いです。日本人はもともと、便の量が多い人種です。それを、思い切りいきんで出すのが気持ちいいために、しやがんで排泄するスタイルの和式便器ができました。

便の量が少ない欧米人は、座って排泄するスタイルを選びました。繊維質は、胃腸では消化できません。食べてもそのまま排泄するしかないので、便が大きくなるのです。同じ茶色で識別しにくいのですが、ゴボウなどは消化されずに便に含まれています。わかりやすいのは、トウモロコシ。黄色い粒が消化されないまま、便と一緒に排泄されるのを見たことはないでしょうか?

あれが、いい例です。大腸内視鏡検査でも、食べたものが腸内に残っていると検査ができないので、受ける方は前日9 時以降の食事が禁止となります。

さらに、検査前の食事の注意として、「野菜・海藻・果物・豆類が入った食事は避けてください」などという通知もされます。内視鏡検査を受けた経験のある方はご存じでしょうが、コンニャクもダメ。野菜がダメなのですから、根菜もアウトです。

果物でいえば、リンゴもバナナもアウトです。ちょっと考えてみれば、これはずいぶん矛盾した話です。一方で、「ダイエットのためには野菜が一番。特に、消化のいい繊維質を増やしましょう」としておきながら、もう一方では「繊維質は消化に悪いので、内視鏡検査の前には食べないでください」です。

どちらが正解かといえば、後者です。現代の医学では、繊維質は消化できないということがはっきりとわかっています。では、便秘症の方が便通をよくしようと、繊維質のものをたくさん食べたらどうなるでしょう。逆に、かえって便秘を促進してしまうだけです。

若い女性は、サラダが大好きです。コンビニやスーパーの惣菜売り場に行くと、購買欲をそそるパッケージの商品も大量に並べられています。でも、それらは単に商魂によるものであって、女性の健康を考えてのことではありません。女性がサラダを食べるのは、健康のため、便通のため、あるいはダイエットのためなのでしょうが、すべては逆効果。

これもまた、間違った情報を世間に流した誰かが悪いのですが、そろそろ正しい情報に書き換えるべきではないかと思います。もちろん、繊維質志向のベースにあるのは、低カロリー・低コレステロールダイエットの迷信です。この間違ったダイエット法は、日本人の便秘を増やす原因になり、ひいては痔を増やす結果にもつながっているのです。

脂肪を食べても太らない

おなかの周りにつくのは脂肪。食べるのも脂肪です。となると、脂肪を食べたらおなかにくつつきそうですが、それはまったくの間違いです。

おなかの脂肪は、さきほど登場した中性脂肪です。ところが、食事で中性脂肪を摂取しても、消化という機能で分解されてしまうので、おなかにはつかないのです。

食べた中性脂肪は、小腸で分解されてカイロミクロンという物質になります。このカイロミクロンの役割は、脂肪の吸収を抑えること。

つまり、もともと脂肪だったものが体内に入ると、今度は脂肪の吸収を抑える役割に変わるのです。こうして、人体には脂肪の量を自動調整する働きが備わっているわけです。同様に、コレステロールにも自動詞整機能があります。その働きによって、コレステロールを多く含む食品をたくさん食べても、体内にあるコレステロールの総量は変わりません。

さきほども述べましたが、体内のコレステロールの8 割は肝臓でつくられ、残りの2割が食事からのもの。たくさん食べても、影響はないのです。

脂肪を食べたら脂肪になると思ってしまうのは、無理からぬことです。同じように、脂身のたくさんついたモツを見ると、「コラーゲンいっぱいで、お肌がプルプルしそう」と感じるのも当然かもしれません。でも、本当はその間に消化・分解・吸収という人体の働きが加わるので、もともとの形のままでは存在できないのです。

人間をデザインしたのが神様なら、神様は実に素晴らしい仕事をされたものです。繰り返します。脂肪やコレステロールは、それをいくら食べてもおなかの脂肪にはなりません。したがって、太ることもありません。