コレステロールの本質

コレステロールについて、どんなイメージを持ってるでしょうか。おそらく、なん
だかドロドロして怪しい物質で、それが体内にあると悪いことをする。

だから、脂のたっぷりついたステーキや揚げ物、肉などは食べないほうがいいらしい…といったイメージをもつ方が大半ではないかと思います。

テレビや雑誌を見ていても、「コレステロール値が高いと不健康」とか、「数値を下げないと動脈硬化になる」といった表現がたびたび登場します。グルメ番組では、「コレステロールがないし、いろいろな野菜がたくさん食べられてヘルシー」と、女性リポーターがほほえみます。コレステロールを悪いものと決めつけ、それを多く含む卵やマヨネーズは
目の敵です。これらは、すべて大間違いです。

実は、コレステロールを悪いとする説が根拠としている実験は、なんと100 年も前の大昔に行われたものでした。

1913 年、ロシアの研究者がコレステロールの豊富な脂肪食を大量に与えるというウサギの実験を行いました。すると、ウサギの血管に動脈硬化が見られたため、両者には相関関係があるとしたのです。ちょっと考えてみれば誰でもわかるのですが、この研究はデザイン段階からおかしなことになっています。

なぜなら、ウサギは草食動物。大量の脂肪分を与えても、体が受け入れられるはずがありません。しかも、このときウサギにできた動脈硬化は血管の外側で、内側にできる人間のそれとはまったく違う疾患といっていいものでした。

80年代、当時も「コレステロール=悪」という風潮でした。コレステロールの本質について、詳しく説明しましょう。
コレステロールは私たちの体に必要不可欠
 

これまでの常識は通用しない、新しいものに変わっていく

室町幕府が始まったのは何年でしょうか?誰もが、「いい国つくろう鎌倉幕府」なのだから1192年だと記憶しているかと思います。室町幕府はどうでしょうか?あまり記憶にない人も多いかもしれませんが、1338年です。室町幕府は、織田信長によって京都から追放される1573年(元亀4年)までの237年間です。

ところが近年になり、源頼朝が権力を握って実際に統治をしていたのはそれより少し前の1185年からだとの認識に改められました。

今では、ほとんどの教科書が1185年を採用しています。もう1つ、私たちが子どもの頃に覚えた「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」という惑星の配列も、現在ではすでに変わっています。

冥王星が惑星の基準を満たしていないとされ、2006年に準惑星に「格下げ」されたのがその理由です。新たな発見があると、世の中のすべてはこうしてデータの書き替えがなされます。

それは医学の分野も同様で、日々ものすごいスピードで進化していきますから、私たち医師は常に勉強していかねばなりません。昔は1日に卵は1個までと言われていましたが、2~3食べても大丈夫と変わりました。

鎌倉幕府や冥王星の例のように、古いデータは廃棄しなければならないのです。

最近の医学の進歩でいえば、2003年にヒトのゲノム(DN  による全遺伝情報)が解読されたことがあげられます。その技術を使って個人の体質を読み取り、病気のかかりやすさや薬の副作用の有無などの研究も進められています。

「両親ともがんで亡くなったから、自分もがんになりやすいはずだ」などと誰もが言いますが、その発症の確率も科学的なデータで算出される時代がやってきたのです。

いわゆる難病として、これまで原因さえ不明だった数々の疾患についても、近いうちに画期的な治療法が見つかるかもしれません。

ゲノムの解読は高校の生物の教科書にも取り上げられ、これまで遺伝の定番として説明されていた「ダーウィンの進化論」や「メンデルの法則」についてはスペースが削減されたそうです。

一方、どういうわけか古いデータが古いまま、「常識」として残されていることもしばしば。これには、さまざまな立場の人の思惑や建て前がからんでいるケースも見受けられるので、首をかしげたくなる気持ちになもなります。

そうした間違いに振り回されるのはデメリットしかありません。、低カロリー・低コレステロールダイエットもそうです。

ダイエット関連の医学には、未だに多くの+古い常識がはびこってしまっています。その代表例が、コレステロールの位置づけです。

ちなみに

コレストロールとは | 健康メモ

によればとても大事な役割を担っていることがわかります。過剰になれば問題が発生しますが、人が生きていく上で欠かせないものです。

 

カロリー神話はもう役に立たない

現在、最もポピュラーで定番となっているダイエット法は、「食事療法(低カロリー・低コレステロールダイエット)に 軽い運動」をプラスしたものでしょう。

健康診断で引っかかったような人には、必ず推奨されています。方法で指導していた医師も多いはずです。ところが、失敗する人が多数いたのです。体に入るものを少なくし、出るものを増やすのですから、差し引きすれば減量できて当然でしょう。
必要以上のエネルギーを取り入れないのですから、一見すると理にかなっているようにも思えます。お金に置き換えて考えれば、収入が減って支出が増えたのと同じ。

ですから、差し引き赤字という計算になります。赤字というと聞こえがよくありませんが、この場合の黒字は体重増になるのでNGです。

ところが、人体はお金の収支と同じではありません。満腹することに慣れた体が、その欲求を我慢できないのです。

食事の総量を抑えながら動物性タンパク質や脂肪分を減らし、野菜をたくさん食べるのが、「低カロリー・低コレステロールダイエット」です。病院で推奨されるようになって長い期間が過ぎていますから、健康診断で血糖値や中性脂肪値などの結果が悪かった方の多くが、この方法を経験されたはず。

全国の病院で、医師も看護師も管理栄養士もこぞってこの方法を推進しました。そうした努力の甲斐あって、ここ10年で日本人の食事が大きく変わってきたのも事実です。

摂取するカロリー総量は減り、動物性脂肪摂取量もぐんぐん減りました。ところが、食事の改善とともに減るはずの肥満は一向になくならず、悪いことに生活習慣病はうなぎ上りに増える一方なのです。

特定健診が導入されたのは、つい12年前の2008年のこと。日本人に糖尿病などの生活習慣病が増えていることへの対策として、厚生労働省が導入に踏み切ったものです。長年にわたり、低カロリト・低コレステロールダイエットを進めてきたにもかかわらず、日本人の生活習慣病は増えに増えました。

そのために健康診断を強化し、予防に努めるという考え自体には私も共感できます。ところが、そこでイエローカードをもらった方に対する指導も、低カロリー・低コレステロールダイエットというのが信じられません。こんな話、おかしいと思いませんか?

糖尿病にまでは進んでいなくても、血糖値の高い人は「糖尿病予備軍」とされます。そこまで含めれば、日本の糖尿病患者数はもはや2200万人以上とされ、早急な対策が必要なことはわかっています。あらためていうまでもなく、糖尿病は放置すると危険な合併症が待っている、恐ろしい病気なのですから。そんな大変な状況なのに、いつまでたっても低カロリー・低コレステロールダイエットを唱えているのはあまりにも異常です。

ジョギングやウォーキングがブームになり、多くの街にフィットネスジムもたくさんできたのに、日本人は健康を手に入れられなかったばかりか、ものすごい勢いで生活習慣病を増やしているのです。断言しますが、低カロリー・低コレステロールダイエットは明らかに間違いです。そのことは、以上のような事実からも簡単に証明できています。カロリー神話は、すでに意味をなしていないのです。