食べるだけで、体をスッキリさせてくれる栄養素があります。それは、食物繊維。文字どおり、食物に含まれる繊維質です。栄養素と言っても、食物繊椎のカロリーはゼロ、栄養分もゼロ。
しかし、食物繊維は、体にとり込まれない代わりに、ほかの栄養素の消化・吸収を調節し、余分な栄養素や有害物質を排出してくれます。食物繊維が「おなかのそうじ屋さん」と言われるのもわかります。
そもそも日本人は、昔から豊富に食物繊維をとっていました。野菜、豆、精製されない穀類などを中心とした日本の伝統食は、食物繊維の宝庫です。ところが、食が洋風化するにつれて、タンパク質、脂質の多い食事に変わり、食物繊維をとる量が大きく減ってしまいました。
厚生労働省の調査によると、昭和30 年代までは、食物繊維の1 日の摂取量は平均22gでした。ところが、現在では15g程度にまで低下しています。それが肥満や便秘、さまざまな生活習慣病を招く要因の1つと指摘されています。
つまり、現代の食生活は、私たちをどんどん「太りやすい体」にしていると言えます。では、1日にどれくらい、どのようにして食物繊維をとればいいのでしょうか。厚労省が推奨する食物繊維の摂取量は、成人で1日19~20g。「わずかな量」と思うかもしれませんが、じつは、食材の量にすると相当な量になります。一般的な野菜には食物繊維が含まれていますが、野菜の1日の適量である350gを食べても、そのうち食物繊維は19~20gに達しない場合が多いのです。
たとえば、乾燥の切干し大根100g中には、20g強の食物繊維が含まれていますが、調理すると3倍以上にカサが増します。これは、およそラーメンどんぶり山盛り1杯分です。とても1日に食べられる量ではありません。
じつは、もっと効率的に食物繊維をとれる食べ物があるのです。それは、キノコや海藻類です。キノコはけんちん汁や鍋物にします。海藻類はサラダ、みそ汁(ワカメ)、ヒジキ煮などにします。これらはかさばらないので量がとれます。ほかの野菜といっしょにとるといいでしょう。
「太らない体」をつくるうえで、食物繊維がどれほどの役割を果たすか、次にざっと挙げてみます。「太らない体」と言っても、やせることを意味するのではなく、若さを保つ、若返るといった意味です。
- 噛む回数を増やし、唾液の分泌を良くする…消化の促進、肥満の予防
- 消化液(すい液、胆汁) の分泌量を増やし、働きを良くする…消化の促進
- 腸内の有害物質の排出を促す…便秘の予防、がんの予防、美肌
- 腸内細菌のバランスを良くする…整腸、免疫力アップ、感染防御
- 便を軟らかくし、量を増やす…整腸、便秘の予防・改善
- 血糖値の急上昇を防ぐ…「糖化」の抑制、肥満や糖尿病の予防・改善
- 血中コレステロールの上昇を防ぐ…脂質異常症の予防・改善、動脈硬化の予防
その他、塩分の吸収を抑制して血圧の急な上昇を防ぐ、腸の粘膜を保護して潰瘍を予防する、といった健康上の働きがあります。実際、食物繊維の摂取量が30gの人は、15gの人に比べて、心臓発作を起こす確率が3分の1という調査結果もあります。このように、食物繊維は「太らない体」をつくるとともに健康維持に欠かせない栄養素なのです。
食物繊維が便秘の予防や改善に役立つことはよく知られています。便通がいいことは腸内環境が整っているということで、腸がきれいだと若さを保つことにつながります。
食物繊維やビタミン、ミネラルなどを含んだお茶も便秘解消に役立ちます。