人工透析の厳しい現実や、失明寸前になった方のエピソードは、驚いたかもしれません。
でも、糖尿病はそれほど恐ろしい病気です。その点だけは、忘れてはいけません。
これだけ糖尿病患者が増えている以上対岸の火事では済まされないところまできています。もう1つだけ、データを提示しましょう。前の項で、日本の透析患者さんは毎年1 万人ずつ増えると書きましたが、実際に増えているのは3万人。つまり、毎年2 万人が亡くなっているのです。糖尿病によって腎臓病を患い、人工透析を始めた方の平均余命は、わずか5年程度しかありません。
糖尿病は、こうして人々の命をおびやかします。しかし、その大元は肥満ですから、そぅならないような生活をしていけば糖尿痛にもなりません。そこで注目すべきは、食事です。しっかり噛むダイエットは、
- 食事の際、30回噛んでから飲み込む
- 毎日、体重計に乗る
という2つのことをするだけで、無理なくダイエットできる方法です。30回噛むのは大変そうですが、すぐに習慣化するので安心してください。
ダイエットの効果についても、折り紙つきです。そう書くと、「お前、自分がやっていることを自慢するな」と叱られそうですが、折り紙をつけてくれたのは私ではなく患者さんたちです。
ところで、人はなぜ太るのでしょうか。食べるものの量や、コレステロールなどの脂肪分ではないことは、アメリカでの研究結果からも明らかです。その研究で、人々はコレステロールを控える代わりに炭水化物を食べ、肥満と糖尿病を増やしました。
答えは簡単、肥満の原因は炭水化物。つまり主食にあったのです。日本人はご飯、欧米人はパンが主食。材料でいえば、米と小麦です。これらが主食になったのは、人類の歴史でいえばつい最近の出来事でした。
糖質制限ダイエットは主食を抜いて、お肉、お魚は制限なく食べるダイエットです。
諸説あるようですが、人類が地球上に生まれて400万年。サルからヒトヘ、歴史で習つたアウストラロピテクスやネアンデルタール人を経て進化を遂げてきました。その長い間、人類が何を食べてきたかといえば、肉。狩りをして、獲物を得ていたのです。
狩猟生活では、いつ食事ができるかがわかりません。現代のように、朝昼晩と3 回食べるなんて、夢のまた夢。ということは、食事で得たエネルギーをなるべく消費せず、次の獲物を得るまでもちこたえる必要があります。そうして人類は、体にエネルギーを貯蔵する仕組みを備えるようになりました。
進化は、生活の状態に沿って進みます。たとえば深海魚は目が退化しますし、アリクイは指が長くなりました。
人類も、しばらく獲物が取れなくても生きられるよう、長い時間をかけて体内をつくり変えていったのです。人類でそれが特に顕著なのが、女性です。出産や授乳という大きな仕事を与えられた女性は、赤ちゃんが泣けばおっぱいを与えなくてはなりません。それが夜中でも、自分がどんなに空腹のときでも、赤ちゃんはお構いなしに泣きます。
しかし、狩猟生活ではいつ食事にありつけるかがわかりません。ですから女性には、目の前に食べ物があると、あるだけ全部食べるクセがつきました。買ってきたお弁当を残さないのもそのためですし、家族の食べ残しを全部平らげるのもお母さんの役割です。
なぜかといえば、体に脂肪をためなければならなかったから。そうして、脂肪を蓄えることのできる女性は、食べ物があると残さず平らげて人類を守ってきました。現代に生き残っている女性にも、太ろうとする本能がそのまま備わっていますから、放っておくと必ず太ります。太らないと死んでしまうからです。
生きるために蓄えた脂肪を、運動して燃やしてしまったらどうなるでしょう? 夜中におっぱいが出なくなります。だから女性は、その日のうちに脂肪を取り戻そうとして、たくさん食べるのです。運動するとおなかがすくのは、本能なのです。