日本は、世界一の長寿国です。もう10年前の調査では平均寿命は、女性86.39歳、男性79.64歳でした。65歳まで生存する人の割合は、女性が93.6%、男性が86.9%。75歳までの場合は、女性が86.5 % 、男性が72.1 % に上ります。
しかし、これほどの長寿国になったのは戦後のこと。1947年(昭和22年) の平均寿命は、女性53.9歳、男性50.0歳でした。
明治時代は37歳程度で、大正時代にやっと40歳以上になったのです。世界的に見ても、日本は低寿命国でした。戦後の急速な伸びは、ほかの国とは趣が異なります。アメリカ、フランス、オランダなどの平均寿命は、1950年時点でも70歳前後でした。それらの国々が、戦後60年間で平均寿命を10年ほどしか伸ばしていないのに対し、日本は30年も伸ばしたのです。
理由は、動物性タンパク質摂取量の大幅な増加。つまり、肉食の急増にありました。大正初期には3 gしかなかったのに対し、1980年には39 gと飛躍的な伸びを見せています。
こうして近代日本人の食生活はヒト本来のデザインに沿ったものに戻り、だからこそ平均寿命を大きく伸ばしたのだといえます。スポーツ中継などを見ると、そのことをひしひしと感じます。
日本人の体格がよくなり、たとえば最近のフィギュアスケート選手などは手足も長く、とても美しく見えます。欧米の選手と比較しても、まったく見劣りしなくなりました。これは、米と野菜を食べてそうなったのではありません。平均寿命の伸びと同様に、肉食のおかげで体格がよくなったのです。
全国の肉消費が少なかった時代にも、沖縄県だけは本土と異なる食文化をもっていました。日常的に、ヤギやブタを食べる慣習があったのです。ご先祖の仏壇に供えるのは豚肉ですし、風邪をひいたら豚レバー入りのおかゆを食べ、非常食はポークの缶詰です。そのため、沖縄県民はずっと長寿を誇っていました。
ところが、「26 ショック」です。これを、食生活の欧米化のせいだとする人がいますが、まったくの事実誤認です。長い米国統治の時代があったため、本土に先んじて欧米風の食事が広まり、健康を害して早死にする人が増えたとする説ですが、沖縄にはもともと肉食文化がありました。沖縄県民の平均寿命を短くしたのは、ほかでもなく「ヘルシー」な和食だったのです。
肉をよく食べる欧米風の食生活のせいで沖縄県民の平均寿命が下がったとする説は、まったく当てはまらないといえるのです。
ところで、沖縄の人たちが普段どのような食事をしているか、皆さんはご存じでしょう
か。ゴーヤチャンプルーに代表される、独特の食材を使った沖縄料理ばかりを食べているとのイメージがあると思いますが、実際はそうではありません。県内に沖縄料理店はそれ
ほど多くありませんし、車で国道を走っていて目立つのは、和食の店ばかり。沖縄県民の食事は、すごい勢いで本土化を進めたのです。