誤りの多いダイエット情報

食物繊維が便秘の原因になっているという場合も

低カロリー・低コレステロールダイエットでは、タンパク質や脂肪分を抑えるとともに野菜の摂取をすすめています。そのとき、特に推奨されるのが、ゴボウ・ダイコン・キャベツなど繊維質の多い野菜です。

じつは、これも、まったくの間違いです。日本人はもともと、便の量が多い人種です。それを、思い切りいきんで出すのが気持ちいいために、しやがんで排泄するスタイルの和式便器ができました。

便の量が少ない欧米人は、座って排泄するスタイルを選びました。繊維質は、胃腸では消化できません。食べてもそのまま排泄するしかないので、便が大きくなるのです。同じ茶色で識別しにくいのですが、ゴボウなどは消化されずに便に含まれています。わかりやすいのは、トウモロコシ。黄色い粒が消化されないまま、便と一緒に排泄されるのを見たことはないでしょうか?

あれが、いい例です。大腸内視鏡検査でも、食べたものが腸内に残っていると検査ができないので、受ける方は前日9 時以降の食事が禁止となります。

さらに、検査前の食事の注意として、「野菜・海藻・果物・豆類が入った食事は避けてください」などという通知もされます。内視鏡検査を受けた経験のある方はご存じでしょうが、コンニャクもダメ。野菜がダメなのですから、根菜もアウトです。

果物でいえば、リンゴもバナナもアウトです。ちょっと考えてみれば、これはずいぶん矛盾した話です。一方で、「ダイエットのためには野菜が一番。特に、消化のいい繊維質を増やしましょう」としておきながら、もう一方では「繊維質は消化に悪いので、内視鏡検査の前には食べないでください」です。

どちらが正解かといえば、後者です。現代の医学では、繊維質は消化できないということがはっきりとわかっています。では、便秘症の方が便通をよくしようと、繊維質のものをたくさん食べたらどうなるでしょう。逆に、かえって便秘を促進してしまうだけです。

若い女性は、サラダが大好きです。コンビニやスーパーの惣菜売り場に行くと、購買欲をそそるパッケージの商品も大量に並べられています。でも、それらは単に商魂によるものであって、女性の健康を考えてのことではありません。女性がサラダを食べるのは、健康のため、便通のため、あるいはダイエットのためなのでしょうが、すべては逆効果。

これもまた、間違った情報を世間に流した誰かが悪いのですが、そろそろ正しい情報に書き換えるべきではないかと思います。もちろん、繊維質志向のベースにあるのは、低カロリー・低コレステロールダイエットの迷信です。この間違ったダイエット法は、日本人の便秘を増やす原因になり、ひいては痔を増やす結果にもつながっているのです。

脂肪を食べても太らない

おなかの周りにつくのは脂肪。食べるのも脂肪です。となると、脂肪を食べたらおなかにくつつきそうですが、それはまったくの間違いです。

おなかの脂肪は、さきほど登場した中性脂肪です。ところが、食事で中性脂肪を摂取しても、消化という機能で分解されてしまうので、おなかにはつかないのです。

食べた中性脂肪は、小腸で分解されてカイロミクロンという物質になります。このカイロミクロンの役割は、脂肪の吸収を抑えること。

つまり、もともと脂肪だったものが体内に入ると、今度は脂肪の吸収を抑える役割に変わるのです。こうして、人体には脂肪の量を自動調整する働きが備わっているわけです。同様に、コレステロールにも自動詞整機能があります。その働きによって、コレステロールを多く含む食品をたくさん食べても、体内にあるコレステロールの総量は変わりません。

さきほども述べましたが、体内のコレステロールの8 割は肝臓でつくられ、残りの2割が食事からのもの。たくさん食べても、影響はないのです。

脂肪を食べたら脂肪になると思ってしまうのは、無理からぬことです。同じように、脂身のたくさんついたモツを見ると、「コラーゲンいっぱいで、お肌がプルプルしそう」と感じるのも当然かもしれません。でも、本当はその間に消化・分解・吸収という人体の働きが加わるので、もともとの形のままでは存在できないのです。

人間をデザインしたのが神様なら、神様は実に素晴らしい仕事をされたものです。繰り返します。脂肪やコレステロールは、それをいくら食べてもおなかの脂肪にはなりません。したがって、太ることもありません。

中性脂肪やコレステロール値は高い方が長生きできる

アメリカと同様、日本でもこれらの調査を行っている研究者がいます。たとえば、東海大学医学部のグループは、大規模なコホート研究(ある一定のグループを長期間にわたり追跡調査する手法) をいくつも実施しています。

神奈川県在住の約2万6000人を調査したデータでは、LDLコレステロール値が100mg/dl以上の人と99mg/dl以下の人に分けた場合、男性では99mg/dl以下のグループのほうが死亡率が高いという結果になりました。

一方、女性のほうは男性と違って1120mg/dlあたりに境界線がありましたが、こちらも数値の大きい人のほうが長生きできるという結果でした。

いずれの性別でも、数値が90 、80、70 と下がっていくほど、死亡率も高くなるという共通点がありました。

同じ研究は、茨城県在住の9万1000人を対象にしても行われ、こちらでも神奈川県とまったく同じ結果が出ました。LDLだけでなく、総コレステロール値においても結果は同様で、がん・脳卒中・心筋梗塞を発症するリスクについても、数値が高い群のほうが低い.結果になりました。

神奈川県は8年以上、茨城県は10年以上に及ぶ追跡調査です。これだけの大規模調査ですから、ここで出たデータは信用に足る内容だといえます。

大げさにいえば、「コレステロール値を下げると早死にする! 」となるでしょう。東海大学のグループは、中性脂肪に関する調査も行っています。こちらもコレステロール同様、数値が高めの群のほうが長生きするという結果でした。

これらのデータから導き出される結論は、「日本人は、コレステロール値が高いほうが長生き」と、「日本人は、中性脂肪値が高いほうが長生き」の2つ。

これはもう、新たなエビデンスを創出したといってもいいでしょう。そして、このエビデンスが示すもう1つの事実といえば、低カロリー・低コレステロールダイエットがまったく無意味だということです。

ただし、一点だけ注意してください。コレステロール値が高い人の中には、家族性高脂血症という病気の方がいます。患者数はごく少ないのですが、この病気の方だけはコレステロール値が高くならないようにコントロールする必要があります。

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