食事のスタイルとしては早食い、摂取する栄養素としては炭水化物が肥満の原因でした。

炭水化物を多く含む食品は、ご飯・パン・麺類などの主食です。それらをたくさん食べて満腹になっても、すぐに空腹になるメカニズムが備わっているのです。

主食ばかりの食事には、大きな欠点がもう1つあります。人間が食事で摂取するべき栄養素が、決定的に不足してしまうことです。

例として、パスタ、ラーメン、ご飯の栄養分を調べてみましょう。今はインターネット時代ですから、パソコンさえあれば簡単に計算できます。調べたい食品を選んで重量を入力するだけで、成分ごとの含有量が一瞬で表示されます。それぞれ1 食分として、パスタは、「マカロニ・スパゲッティー乾」を80 g 、ラーメンは「中華めん生」を120 g、ご飯はおにざり2 個分で240 gと設定しました。

炭水化物の含有量がとても多いことが、ひと目でわかります。特に、パスタは重量の70 % 以上が炭水化物でした。特に注目していただきたいのは、ビタミンの欄。

A もB もC も、見事なまでにゼロの行進です。同じく、β カロチンもゼロ。つまり、私たちが主食にしている食品はほとんど炭水化物だけで構成されており、ほかの成分はわずかしか含まれていないのです。

では、このデータを実際の食事にあてはめてみましょうか。ある日の昼食に、ラーメンを食べたとしましょう。今はラーメン店も過当競争になっていますから、多くの店で無料のサービスライスがつきます。それをラーメンと一緒に食べたとしたら、一度の昼食に含まれる栄養分はどうでしょうか?

炭水化物だけで、ビタミン類やβ カロチンがまったくない、とても貧弱な昼食です。でも、食べた後にはとりあえず満腹を感じています。

ただし、これは胃の中のラーメンライスがおなかをふくらませただけの、物理的な満腹感。このとき、脳がどういう状態にあるかといえば、「必要とされる栄養分の不足」を感じている状態にあります。

同時に、体内では「炭水化物を大量摂取した後の血糖値の乱高下」が始まります。その結果、食べてから2 〜3時間もたつと、再び激しい空腹感が首をもたげます。

そこで食べたくなるのは、もちろん炭水化物。だからこそ、煎餅やクッキーやポテトチップがコンビニの店頭にたくさん並んでいるわけです。どれも、米や小麦粉やジャガイモという、炭水化物を多く含んだ材料でできた食べ物です。

炭水化物を食べて得た物理的満腹感は、こうして永遠にループしていきます。この状態を、「炭水化物中毒」だと指摘する専門家もいます。中毒まではいかないにせよ、多くの方がこのような食生活をしているはず。

だからこそ、3食ともにご飯や麺類を食べ、寝る前におなかがすいたらまた炭水化物のカップラーメンで満たすことになるのです。

そんな食生活では、ビタミン類やβ カロチンが取り入れられません。細胞やホルモンの材料になる、人体にとって欠かせないコレステロールも不足します。

朝、お子さんにおにぎりだけを食べさせて学校に行かせたら、どうなることでしょうか?

1日に30品目とか5色をそろえる食事法は、この栄養成分表のすべてをバランスよく摂取しなさいという意味です。

方法論は煩雑すぎて覚えられませんが、すべての栄養素を満遍なく取るという考え方自体は、けっして間違っていません。むしろ、そうであるべきでしょう。しかし、炭水化物が多量に含まれたご飯・パン・麺類ばかりの食事では、そうはいきません。

おなかはすく一方なのに、体にはどんどん脂肪がついていって太ることになります。つまり、肥満の原因は栄養失調にあったのです。ラーメンやパスタにはトッピングがありますが、それを加えても炭水化物だけを突出して摂取することには変わりありません。