アメリカと同様、日本でもこれらの調査を行っている研究者がいます。たとえば、東海大学医学部のグループは、大規模なコホート研究(ある一定のグループを長期間にわたり追跡調査する手法) をいくつも実施しています。
神奈川県在住の約2万6000人を調査したデータでは、LDLコレステロール値が100mg/dl以上の人と99mg/dl以下の人に分けた場合、男性では99mg/dl以下のグループのほうが死亡率が高いという結果になりました。
一方、女性のほうは男性と違って1120mg/dlあたりに境界線がありましたが、こちらも数値の大きい人のほうが長生きできるという結果でした。
いずれの性別でも、数値が90 、80、70 と下がっていくほど、死亡率も高くなるという共通点がありました。
同じ研究は、茨城県在住の9万1000人を対象にしても行われ、こちらでも神奈川県とまったく同じ結果が出ました。LDLだけでなく、総コレステロール値においても結果は同様で、がん・脳卒中・心筋梗塞を発症するリスクについても、数値が高い群のほうが低い.結果になりました。
神奈川県は8年以上、茨城県は10年以上に及ぶ追跡調査です。これだけの大規模調査ですから、ここで出たデータは信用に足る内容だといえます。
大げさにいえば、「コレステロール値を下げると早死にする! 」となるでしょう。東海大学のグループは、中性脂肪に関する調査も行っています。こちらもコレステロール同様、数値が高めの群のほうが長生きするという結果でした。
これらのデータから導き出される結論は、「日本人は、コレステロール値が高いほうが長生き」と、「日本人は、中性脂肪値が高いほうが長生き」の2つ。
これはもう、新たなエビデンスを創出したといってもいいでしょう。そして、このエビデンスが示すもう1つの事実といえば、低カロリー・低コレステロールダイエットがまったく無意味だということです。
ただし、一点だけ注意してください。コレステロール値が高い人の中には、家族性高脂血症という病気の方がいます。患者数はごく少ないのですが、この病気の方だけはコレステロール値が高くならないようにコントロールする必要があります。