「歩く」というと、「1日1万歩」が頭をよぎる人も多いことでしょう。たしかに厚生労働省をはじめ多くの専門機関が、1日8000歩~10000万歩を推奨しています。
「1日10000歩」とは、1日中の全活動の歩数です。仕事や通勤、買い物や家事といった生活活動での歩数(生活活動量) と、その他、意識的に行なう運動・スポーツ(ウォーキングやジョギングなど) での歩数(運動量) の合計ですが、じつは、普通歩行だけでも、1日60分」ほど歩いていれば十分「1日10000歩」は、達成できます。もちろん、よほど日常的に歩くのが「好き」という人でなければ、「1日60分」も歩くことはないでしょう。
しかし、逆に言えば、普通歩行「だけ」でも、「1日60分」で「1日10000歩」は満たせるのです。デスクワークが多い人でも、意識的に少し、通勤に徒歩をまじえたり、会社でも階投を使ったりなど、動く機会を持つようにすれば、意外と簡単に達成できます。
「1日10000歩」は、それほどハードルの高い目標ではありません。
このように、日常の無意識的な活動に、意識的な運動を補足するも適しているのが、「歩き」なのです。それにもっとここで改めて言っておきたいのが、「10分を1日3回、週4日、計2時間」で十分だということ「短い時間で、回数を多く歩く」のがもっとも効果的な歩き方だということです。必死になって毎日歩く必要もありません。「1日10000歩」= 「普通歩行60分」と言うと、「60分のウォーキング」で一気に満たそうとする人が少なくありません。その大半は、健康のためのウォーキングは、1時間ほどは歩かなければ効果がないと、思い込んでいます。たしかに、以前は「脂肪を燃やすなら、30分以上続ける必要がある」と言われていました。
「運動のエネルギー源は糖なので、まず糖を燃やしてからでないと脂肪は燃やせない。だから時間がかかる」という理由でした。しかし、この「燃焼順番説」は否定されています。この章の冒頭で触れたように、「軽い運動」、つまり個人感覚で「ややきつい」くらいに歩けば、ホルモンの分泌がよくなって、結果的に肥満が抑えられるのです。
最近の研究で、「60分続けて歩く」より、「10分ずつの細切れ6回」のほうが、血圧を下げるなど健康面でいい影響を及ぼすこともわかってきました。歩くペースは時速6km、つまり一分間に100mから始めて、40代男性なら時速7km強、つまり1分間に100mを目標にします。
普通の歩行で時速4km、1分間約70mが平均ですから、運動不足の人にとっては1分間100mでも、10分間続けるのはけっこうきつく感じるはずです。でも、無理をしないで継続していれば、しだいに目標のペースで歩けるようになり、歩く距離も伸びてきます。具体的には、たとえば週5回の通勤のうち4日間は、朝、自宅から最寄駅まで行くのに15分をかけて歩く、という具合で始めるといいでしょう。
徐々に15分で歩ける距離が伸びてきたら、たまには1駅、2駅先まで少し時間をかけて歩いてみる、といったことにも挑戦してみてください。ただし、くれぐれも無理のないように、何より「継続すること」が大切です。
歩くときは、シューズをスニーカーに履き替えています。革のビジネスシューズでは足への負担が大きく、ひざや足首、かかとを傷めるおそれがあります。適切なのはジョギング用、ウォーキング用といったスポーツシューズで、底は柔軟性のあるもの、かかとはクッション性が高いもの、つま先は余裕があって窮屈でないものです。
スポーツ用品店などでは、ビジネスシューズのようなデザインで、こうした機能を持った靴も扱っています。「通勤用のウォーキングシューズ」を1足、持っておいてもいいでしょう